JR大阪駅前広場ビラ配布事件無罪判決に控訴しないことを求める

法学研究者声明

はじめに

 

 2014年7月4日、大阪地裁(長井秀典裁判長)は、2012年10月17日にJR大阪駅前広場でビラ配布等をしていた市民の表現活動に関連して生じた事件において、威力業務妨害罪(刑法234条)で起訴された韓基大氏に対して無罪判決を言い渡した。

 

 私たち法学研究者は、この無罪判決に対して控訴をしないことを大阪地検に求める。

 

 

 

一 本件の争点と大阪地裁の判断

 

  本件で争われた韓氏の行為は二つある。一つ目は、駅前広場でのビラ配布を制止する駅職員の業務遂行を中止するようにJR大阪駅副駅長に対して、「大声で」抗議等をした行為である。この行為について、大阪地裁は、白昼の屋外で人通りもあったこと、ビラを配布していた者の人数に比べてその制止にあたっていたJR職員の人数は多く、近くに警察官もいたこと等を考慮して、韓氏の抗議によって、JR大阪駅副駅長の円滑な業務遂行が困難になったとはいえないとして、威力業務妨害罪に該当しないとした。

 

   この判断は、従前からの威力業務妨害罪に関する判例に照らして、十分に首肯できるものである。また判決では駅前広場でのビラ配布へのJR職員による制止業務の適法性についての言及はないが、駅前広場という公共性の高い場所での平穏な表現活動が本件の背景にあることを考えると、この制止業務に対する抗議が本件のような態様に留まるようであれば犯罪を構成しないと判断したことは高く評価できる。

 

  二つ目は、市民らによる表現活動の終了後、韓氏を含む市民らが、JR大阪駅構内を通り抜けて移動するため、同駅のコンコース内に立ち入ろうとしたのを、副駅長らJR職員が制止したことに対して、抗議をし、副駅長の体を押しのけて同コンコース内に立ち入った行為である。この行為について、大阪地裁は、同コンコースはJR大阪駅の建物内であり、JR職員は、鉄道営業法および駅建物の管理権に基づき、駅構内の秩序を乱すおそれのある者に対しては、立ち入りを制止する権限があるとした。しかし駅建物や同コンコースの公共性、同コンコースを利用して南北の移動が可能であること、現に鉄道を利用しないものであっても多くの者が通り抜けのためだけに同コンコースを利用しているといった同コンコースの構造や利用状況を考慮し、このような状況のもとでは、鉄道を利用せず、単に通り抜けのために同コンコースを通り抜ける者であっても、駅構内の秩序を乱すおそれのない者を制止する権限はJR職員らにはないとした。

 

 そのうえで、韓氏とともに同コンコースを通り抜けようとした市民らは、プラカード等を所持する等していたものの、他の駅利用者の通行を妨げるような態様での通り抜けではなかったことから、韓氏らの通り抜けを認めても、駅構内の秩序がみだされるおそれはなかったとし、副駅長による制止は、適法な業務の遂行ではないとした。そして、その適法ではない業務の遂行に対する韓氏の抗議は、目的が正当であり、手段も最小限にとどまっているので違法性が無いとした。

 

 この韓氏の二つ目の行為に対する本件判決の判断も、JR大阪駅の構造や利用状況を踏まえ、公共性のある駅構内やコンコースでの駅職員の権限行使が全くの自由ではないことを示したうえで、韓氏の抗議の目的の正当性と手段の相当性とを正しく評価したものとして十分に首肯できる。

 

 

 

二 大阪地検に控訴をしないことを求める理由

 

 本件判決では、駅前広場等での表現活動とそれを規制する法令との調整等の憲法判断は示されておらず、その点は、今後にゆだねられているように見受けられる。そして、具体的な事件の解決に必要な限りで法令解釈をするという裁判所の権限を考えれば、本件判決は、妥当な判決であると私たちは考える。

 

 しかし、私たちが大阪地検に控訴しないことを求めるもっと大きな理由は、本件の性質である。

 

 2012年10月17日の韓氏らのJR大阪駅前広場とそこに隣接する公道上での表現活動は、大阪市による「震災がれき」の受け入れに反対する意見を平穏に表明するためのものであった。これに関して、所轄警察署は、事前にJR大阪駅に対して、駅前広場での街宣活動が駅構内でのデモに発展する可能性があるとして、警備体制を敷くように示唆していた。本件のそもそもの事の発端は、JR大阪駅職員らが、こうした警察情報を鵜呑みにして、現に行われた平穏な表現活動や単なる移動のためのコンコースの通過に対して、不当な圧力をかけたことにある。韓氏は、こうした圧力に対して抗議したのである。さらに、同年12月9日には、大阪府警は、韓氏だけではなく、本件当日に公道上で平穏に表現活動をしていた者も含め、この表現活動の参加者のうち3名を令状逮捕した。この事件の背景には、「震災がれき」の受け入れに対して反対する意見を表明する者に対して、その意見の内容を理由としたと疑われる大阪府警の極めて不合理な捜査権の行使があった。

 

 私たちは、この事件発生直後の2012年12月17に、逮捕された3名を直ちに釈放するように求める声明を70名の憲法研究者の連名で発表した(「JR大阪駅頭における宣伝活動に対する威力業務妨害罪等の適用に抗議する憲法研究者声明」)。それは、この事件での大阪府警およびその意を受けたJR職員らの権限行使が、様々な表現活動をしようとする市民の自由を不当に侵害し、全国の駅頭等での表現活動を委縮させ、日本における多様な意見の表明に裏打ちされた民主主義を深刻に傷つけるものと考えたからである。

 

  このような本件の性質を考えると、本件で、韓氏に、さらなる応訴を求め、韓氏とともに表現活動をした市民に、韓氏の裁判を引き続き支援せざるをえなくすることには、正当な理由をまったく見出せないと私たちは考える。

 

 ゆえに、私たちは、大阪地検に対して、本件判決に対する控訴をしないことを強く求めるものである。

2014 年7 月13 日

 

<呼びかけ人>

石川裕一郎(聖学院大学)、石埼学(龍谷大学)、岡田健一郎(高知大学 )、笹沼弘志(静岡大学)、中川律(埼玉大学)、成澤孝人(信州大学) 、福嶋敏明(神戸学院大学)

 

〈賛同者〉 愛敬浩二(名古屋大学)、青井未帆(学習院大学)、青木宏治(関東学院 大学)、足立英郎(大阪電気通信大学)、綾部六郎(名古屋短期大学)、 飯島滋明(名古屋学院大学)、飯野賢一(愛知学院大学)、井口秀作(愛 媛大学)、石塚伸一(龍谷大学)、稲正樹(国際基督教大学)、稲田朗子 (高知大学)、井端正幸(沖縄国際大学)、植木淳(北九州市立大学)、 植野妙実子(中央大学)、植松健一(立命館大学)、植村勝慶(国学院大 学)、内野正幸(中央大学)、浦田賢治(早稲田大学名誉教授)、浦田一 郎(明治大学)、浦野広明(立正大学)、榎透(専修大学)、榎澤幸広( 名古屋学院大学)、大野友也(鹿児島大学)、大藤紀子(獨協大学)、岡 田行雄(熊本大学)、奥田喜道(跡見学園女子大学)、奥野恒久(龍谷大 学)、小沢隆一(東京慈恵会医科大学)、押久保倫夫(東海大学)、春日 勉(神戸学院大学)、片山等(国士舘大学)、金澤孝(早稲田大学)、上 脇博之(神戸学院大学)、河合正雄(弘前大学)、木下智史(関西大学) 、金尚均(龍谷大学)、小林武(沖縄大学)、小松浩(立命館大学)、斉 藤小百合(恵泉女学園大学)、斎藤司(龍谷大学)、斉藤豊治(甲南大学 名誉教授)、斎藤周(群馬大学)、阪口正二郎(一橋大学)、佐々木光明 (神戸学院大学)、佐藤潤一(大阪産業大学)、志田陽子(武蔵野美術大 学)、清水雅彦(日本体育大学)、菅原真(名古屋市立大学)、鈴木博康 (九州国際大学)、陶山二郎(茨城大学)、芹沢斉(青山学院大学)、高 作正博(関西大学)、高橋利安(広島修道大学)、多田一路(立命館大学 )、只野雅人(一橋大学)、館田晶子(北海学園大学)、塚田哲之(神戸 学院大学)、寺川史朗(龍谷大学)、徳永貴志(和光大学)、内藤光博( 専修大学)、長岡徹(関西学院大学)、中川孝博(國學院大學)、中島宏 (山形大学)、永田秀樹(関西学院大学)、長峯信彦(愛知大学)、永山 茂樹(東海大学)、新倉修(青山学院大学)、丹羽徹(大阪経済法科大学 )、根本猛(静岡大学)、本庄武(一橋大学)、本田稔(立命館大学)、 前原清隆(日本福祉大学)、松原幸恵(山口大学)、松宮孝明(立命館大 学)、三島聡(大阪市立大学)、水島朝穂(早稲田大学)、三宅孝之(島 根大学)、三宅裕一郎(三重短期大学)、宮本弘典(関東学院大学)、三 輪隆(埼玉大学名誉教授)、村田尚紀(関西大学)、本秀紀(名古屋大学 )、森英樹(名古屋大学名誉教授)、守谷賢輔(福岡大学)、山内敏弘( 一橋大学名誉教授)、山口和秀(岡山大学名誉教授)、若尾典子(佛教大 学)、若林三奈(龍谷大学)、脇田吉隆(神戸学院大学)、和田進(神戸 大学名誉教授)、渡辺洋(神戸学院大学)

 

以上91 名。呼びかけ人とあわせ て98 名。(下線は正式発表後の賛同者。)

阪南大学に嘆願書(第二次集約)を提出しました

下地真樹さん他1名の釈放が決まりました

 本日、下地真樹さん他1名の釈放が決まり、7時頃に下地さんは晴れて釈放されました。署名や、各方面から出された声明、会見などが大きな影響を与えたとのことです。

 様々なかたちで支援し、見守って下さったみなさまに、心から御礼申し上げます。 

 

 ただ、此花署から曾根崎署に移管され、12月11日に再逮捕されたHさんは、残念ながら起訴されました。その他にもデモなどの最中に逮捕され、不当に長期間勾留されたり起訴された方は大勢おられます。その方々を支援するためにも、引き続き「市民の不当な逮捕に抗議する署名」を続けたいと思います。どうか今後ともお力添え頂けますよう、お願い申し上げます。

 

2012年12月28日(金)

「放射能拡散に反対する市民を支援する会」

What’s New?

放射能と有害物質を含む震災がれきの

広域処理に反対する市民の逮捕は不当です。

下地真樹准教授らの即時釈放と謝罪を求めます。

署名が8000を超えました。皆さまのお力添えに御礼申し上げます。

※フォームは全て同じ内容です。どれかひとつをクリックしてご署名下さい。

※複数のフォームからのご署名はお控えください。

※英語版については現在準備中です。

※海外の方は、郵便番号欄に0000000と入れてお送り下さい。

 129日、阪南大学経済学部の下地真樹准教授が、大阪府警によって逮捕されました。この逮捕は、形式上も内容上も大変不当なものであり、市民の活動に対する明らかな弾圧です。 

下地准教授らは、震災がれきに含まれる放射性物質やアスベストなど、本来焼却してはいけない有害物質を全国に拡げて焼却・埋立しようとする「震災がれき広域処理」政策に反対していました。大阪市は2月から焼却・埋立を開始しようとしています。

 

逮捕の経緯は次のようなものです。

1017日、大阪市の震災がれき試験焼却に反対する市民有志(下地准教授含む)は、午後3 、大阪駅・東北角の歩道上に集まり、大阪市役所にむけて三々五々歩いて移動しました。その際に、大阪駅構内の東コンコースを北から南へ通り抜けており、この行為を根拠に逮捕されたようです。逮捕容疑は「鉄道営業法違反」「威力業務妨害」「不退去」です。

しかし、「駅構内を通り抜けた」行為が行われたのは2か月近くも前のことであり、今になって逮捕するというのは非常に不自然です。意図的な市民活動への弾圧であると考えざるを得ません。

 

下地准教授ら市民有志は、小さな子どもを持つお母さんたち、とりわけ福島・東北・関東から関西に避難移住して来られた人たちの不安な気持ちに寄り添い、放射能汚染の拡散を阻止するために活動をされてきました。福島原発事故は、膨大な人々の心身の健康と財産に被害を及ぼしました。適切な安全対策を行わず原発の運転を強行し続けた国と電力会社・原発メーカーなどの責任こそが問われなければならないはずです。

 

ところが、これら放射能を拡散させた国や企業の刑事責任は一切問われないままに、今回のように、放射能汚染の拡散に反対して声を上げることが刑事弾圧の対象にされているのです。このようなことは決して許されることではありません。既に大阪だけでも震災がれきの広域処理に反対した市民5名が逮捕され、長期にわたって拘留され、起訴されている人もいます。

 

私たちは、今回の不当逮捕に対し、厳重に抗議すると共に、即時釈放と謝罪を求めます。

 

20121210

放射能拡散に反対する市民を支援する会 

【重要】署名に協力してくださる皆様へ

   署名を大阪府警察等に提出する際、「呼びかけ人」のお名前のみを公表し、それ以外の賛同者(署名してくださった方)については、人数のみを公表します。署名簿は保管に留めて提出はしません。

② メディアに対する公表についても①と同様にします。ただし、メディアから「署名簿を確認させてほしい」という依頼があれば、閲覧のみ許可します(コピー・撮影は不可)。

※英語版については現在準備中です。

※海外の方は、郵便番号欄に0000000と入れてお送り下さい。

呼びかけ人 2012年12月25日現在 100名! ※呼びかけ人リストは順次追加中です

呼びかけ人

朴勝俊

関西学院大学准教授

石田紀郎

元京都大学教授、市民環境研究所代表

槌田劭

元京都精華大学教授、元京都大学助教授

細川弘明

京都精華大学教授

中尾ハジメ

京都精華大学教授

川那部浩哉

元京都大学教授

安富歩

東京大学教授

仲尾宏

京都造形芸術大学客員教授

小出裕章

京都大学原子炉実験所助教

海老澤徹

元京都大学原子炉実験所助教授

小林圭二

元京都大学原子炉実験所講師

川野眞治

元京都大学原子炉実験所助教授

早尾貴紀

東京経済大教員

リック・タナカ

ジャーナリスト、翻訳家

大野裕

立命館大学教授

土井利幸

元福岡女学院大学助教授・マヒドン大学大学院

向原祥隆

図書出版南方新社代表

立岩真也

立命館大学大学院教員

森岡正博

大阪府立大学教員

稲邑恭子

we」編集長

太田昌国

現代企画室編集者・評論家

鵜飼哲

一橋大学教員

中村泰子

we」編集部

趙博

シンガーソングライター

池田浩士

京都大学名誉教授・京都精華大学客員教授

今岡良子

大阪大学准教授

岡真理

京都大学教授

丸川哲史

明治大学教授

大津定美

神戸大学名誉教授

河野益近

京都大学大学院教務職員

吉野太郎

関西学院大学専任講師

畑明郎

日本環境学会前会長・元大阪市立大学大学院教授

丹羽健介

文芸春秋「文學界」編集部

徐京植

東京経済大学現代法学部教授

石原俊

明治学院大学准教授

春山文枝

多目的カフェかぜのね

笹沼弘志

静岡大学教授、野宿者のための静岡パトロール事務局長

マーサ・メンセンディーク

同志社大学社会学部准教授

熊本一規

明治学院大学教授

吉度日央里

オーガニック・ジャーナリスト

黒田末寿

滋賀県立大学教授

山田耕作

元京都大学教授

大和田幸嗣

元京都薬科大学教授

井戸謙一

弁護士

守田敏也

フリーライター

中村和雄

弁護士

川口有美子

作家、第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞

丸山里美

立命館大学教員

崎山政毅

立命館大学教授

細見和之

大阪府立大学教員

ビー・カミムーラ

ナブルス通信編集部

中地重晴

熊本学園大学社会福祉学部教授

青山貞一

東京都市大学名誉教授、早稲田大学理工非常勤講師

浦井憲

大阪大学大学院経済学研究科教授

吉国浩哉

昭和女子大学専任講師

丹羽雅雄

大阪労働者弁護団代表幹事

西谷文和

フリーランスジャーナリスト

海南友子

ドキュメンタリー映画監督

酒井隆史

大阪府立大学准教授

市野川容孝

東京大学教授

永橋爲介

立命館大学教員

宮崎寛

NGO e-みらい構想、龍谷大学非常勤講師

山中速人

関西学院大学総合政策学部教授

伊藤宏

プール学院大学短期大学部准教授

渡邊太

大阪国際大学講師

木原壯林

京都工芸繊維大学名誉教授

伊藤公雄

京都大学大学院文学研究科教授

藤目ゆき

大阪大学教授

本田宏

北海学園大学教授

吾郷健二

西南学院大学名誉教授

藤原寿和

放射性廃棄物全国拡散阻止!3.26政府交渉ネット

長野宇規

神戸大学大学院農学研究科准教授

島和博

大阪市立大学院教授

中北龍太郎

弁護士

溝川悠介

大阪府立大学名誉教授

マシオン恵美香

画家・美術講師

池内靖子

立命館大学教授

三宅孝之

元島根大学教授

佐藤=ロスベアグ・ナナ

イーストアングリア大学講師

清末愛砂

室蘭工業大学教員

木戸衛一

大阪大学教員

本多一寿

真宗大谷派宗議会議員、護念寺住職

松久寛

元京都大学教授

山田創平

京都精華大学人文学部専任講師

松名隆

室蘭工業大学教員

吉井公彦

元国立医薬品食品衛生研究所主任研究官

山本奈生

佛教大学社会学部専任講師

西村貴裕

大阪教育大学准教授

高橋登

大阪府泉大津市議会議員

佐藤昭夫

早稲田大学名誉教授・弁護士

大口昭彦

弁護士

遠藤憲一

弁護士

浅野史生

弁護士

大河内泰樹

一橋大学教員

生田卍

河合塾講師・ミュージシャン

伊田久美子

大阪府立大学教授

小寺山康雄

コミュニティセンター・ポポロ代表

中山幹夫

神田外語大学教授

阿部太郎

名古屋学院大学准教授

貴戸理恵

関西学院大学助教

平川秀幸

大阪大学准教授

高島与一

神戸芸術工科大学教員・脚本家

新納昭秀

経営コンサルタント

セバスチャン・プフルークバイル

ドイツ放射線防御協会会長